作家の 畢淑敏 は、「自分自身を大切にすることは、最もシンプルで基本的な常識である」と述べています。この言葉を最も心に留めるべきなのは、世界中の 母親たち ではないでしょうか。

育児の責任と家事の忙しさの中で、多くの母親たちは 自分の時間や空間を失い、自己成長を後回しにしがち です。かつて、こうした姿を「犠牲」や「偉大なる母性愛」と称えました。しかし、「母性愛」が一つの固定観念として語られると、それは時に女性に対する 無意識の制約 となることもあります。

これは、「母親は子どもを置いて自由に遊びに行くべき」と言っているのではありません。ちょうど「楽しい教育」が「勉強を一切せずに遊ばせる」ことと イコールではない ように、極端な二元論では問題の本質は見えてきません。私たちに必要なのは、より 深い智慧と慈悲、そして生命の本質を見抜く洞察力 です。

「母親会Wuyun」 は、教育者や学者、女性たちの力を借りながら 「智慧のある育児」 を広めるために、1年以上にわたり活動を続けています。母親自身が幸福で心豊かであれば、家庭にもその喜びが伝わり、子どもにとっても精神的な支えや養分となるはずです。

だからこそ、 母親自身が成長することが、子どもを育てるうえで最も大切 なのです。


「自己表現をしない子どもに対して、母親ができる4つのこと」

7月1日、猛暑が続く東京のなか、多くの母親たちが 池袋に集まり、石田先生の講義に耳を傾けました。この日のテーマは、
「自分の意見を言わない子どもに対して、母親ができる4つのこと」 でした。

アジアの文化では、集団を重視し、個人の意見は二の次にされる傾向があります。特に、日本の社会では、 「周囲と同じであることが安全」 という価値観が幼少期から植え付けられます。その結果、子どもたちは 自分の意見を表現する機会 を失っていきます。また、思春期の子どもたちは、親と距離を取りたくなり、家で何も話さなくなることもあります。

そんな子どもたちに対し、石田先生は 4つのアプローチ を提案しました。

① 子どもが興味を持っている話題を話す

学習のことばかりを繰り返し話すのではなく、 子どもが関心を持っている話題 について話し合いましょう。会話の糸口を見つけることで、子どもは 自然に話したい気持ち になります。

② インタビューのように質問を投げかける

良いインタビュアーは、相手の言葉を受け止めながら、 「どうしてそう思うの?」「どうしたらいいと思う?」 などの質問を投げかけます。
「はい」や「いいえ」だけの答えにならないような オープンな質問 をすることで、子どもがより自由に自分の考えを表現しやすくなります。

③ 「意見=正解ではない」と伝える

「意見」とは、正しい・間違っているという結論ではない ことを子どもに伝えましょう。意見を言うことにプレッシャーを感じないようにすることで、気軽に自分の考えを口にする習慣が生まれます。

④ 異なる意見を「学びのチャンス」として伝える

自分とは違う意見を知ることは、 新たな視点を学ぶチャンス です。他者の考え方を知ることは、自分の世界を広げることにつながると子どもに伝えましょう。


「子どもの成長を妨げていませんか?」—親の振る舞いを振り返る

子どもが小さい頃、 水たまりに足を入れてみようとした時、私たちはすぐに「靴が汚れるからダメ!」「風邪をひくからやめなさい!」と 探索を止めさせていませんでしたか?

子どもが失敗した時、 感情的になって長々と説教 し、子どもが言葉を発する機会を 奪っていませんでしたか?

家事の手を止めて、 子どもが本当に話したいことに耳を傾けたこと はありますか?

「効率」や「正しさ」ばかりを基準にしてしまうと、子どもが 自分の考えを表現する機会を何千回も失うことになります

しかし、今ならまだ間に合います。私たちが 「評価する目線」 を手放し、子どもと一緒に成長するプロセスを楽しむことができれば、子どもは 安心して考え、意見を言う力を育む ことができます。


「愛とは、深い理解と受容である」

人本主義心理学者 カール・ロジャース は、
「愛とは、深く理解し、受け入れること」 だと言いました。

母親が子どもにしてあげられる 最も大切なこと は、 「子どもが自分自身になることを助けること」 です。

そして、そのためには 母親自身が自由であることが不可欠 です。 心から自由な母親こそが、子どもに本当の愛と自由を与えることができるのです。

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